徳島県医師会は、南海トラフ巨大地震で多数の死者が出た場合に、死亡確認などをする検案に習熟した医師が不足するとして、検案方法を説明するDVDを全国で初めて制作した。県内の医師約600人と全国の医師会には無料配布した。
発案した川島周会長は「大規模災害時に検案医が多数必要となるのは全国共通の課題。繰り返し見て、災害に備えてほしい」と話している。
DVDは、死因や死後の経過時間により遺体に表れる変化や、身元判明につながる手術痕など、留意点を示しながら全身や局所の観察方法を動画や写真で分かりやすく解説。必要な用具や服装、死体検案書の書き方についても説明している。約2時間で、3240円。兵庫県の監察医として阪神大震災で検案に携わった徳島大の西村明儒教授(法医学)が監修した。
県医師会によると、震災で死亡した人の遺体は医師による死体検案書の作成が必要で、遺体を速やかに遺族に返すためには円滑な検案が求められる。紛れ込んだ事件・事故による遺体を見逃さない目的もある。
南海トラフ地震による徳島県内の死者数は、県の想定で最大約3万1千人。一方、定期的に検案をする医師は県内で10人ほどとされ、人員不足が予想される。同じように検案医が不足した東日本大震災では全国の医師が応援に駆け付けたが、広域災害では十分な応援は必ずしも期待できない。
DVDを見た徳島県鳴門市の小川病院の小川哲也院長は「検案は医学部の必修科目に含まれ、すべての医師が検案書を作成できるが、実際に携わる機会は少ない。実習研修などと併せて活用することで、よい『復習』になる」と話している。〔共同〕