宇宙の謎の一つ「暗黒物質」からのシグナルを捉えた可能性があるとする従来の成果を補強するデータを得たと、欧州合同原子核研究機関(CERN)などの国際チームが15日、発表した。国際宇宙ステーションで粒子を観測した結果で、チームは解明に向けさらにデータを蓄積する。
ステーションに設置されているAMSという装置で観測。暗黒物質は宇宙の質量の一部を占めるとされる物質で、未知の素粒子との見方が有力視されている。直接検知できないが、宇宙空間を飛び交う他の粒子を捉えて痕跡を調べている。
この日発表した最新データによると、4年間で600億個以上の粒子を観測した。分析の結果、マイナスの電荷を持つ陽子である「反陽子」が理論上の予測より多かった。暗黒物質同士が衝突すると反陽子ができると考えられており、過剰な反陽子は暗黒物質が原因とみてもおかしくないとしている。
チームはこれまでに、プラスの電荷の電子「陽電子」が多いとの観測結果を公表していた。暗黒物質から生成された可能性があるとしていたが、パルサーと呼ばれる別の天体が原因の可能性も指摘されていた。
今回観測した反陽子は、パルサーからはほとんど生成されないという。チームの台湾中央研究院物理研究所の灰野禎一・副研究員(准教授)は「陽電子以外に、反陽子も暗黒物質を起源としても矛盾のない結果となった。さらなる解明にはデータの理解を深めることが必要だ」と話している。〔共同〕