経済協力開発機構(OECD)はその名前と同様、しばしば複雑に感じられる組織だ。データ収集、調査、経済予測など多岐の業務が融合し、国際的な政策立案のための討議の場として役割を果たしている。
業務の多くは有益で、一部はほかの業務よりさらに有益だ。それでもOECDは新たな刺激を必要としている。OECDは、影響力を増す必要があるだけでなく、「金持ち国クラブ」として創設され、いまだその印象が強い同組織により多くの新興国の政府を引き入れなければならない。
IMFのラガルド専務理事(左)と話すOECDのグリア事務総長(3月11日、ベルリン)=ロイター
メキシコ財務相を務めた経験のあるOECDのグリア事務総長は2期目で、来年任期切れとなる。同組織は最近、いくらか重要な進歩を遂げたものの、その発展を迅速化するには新しい活力が必要だ。OECDには、政策論議をリードする知的な目的遂行力と、加盟国に微妙な影響をもたらす政策について国際取引をまとめる政治的な重みを兼ね備えた指導者が必要だ。
■貴重な役割担うOECD
OECDの一部の業務、特にマクロ経済の分析と予測は、国際通貨基金(IMF)などほかの機関で行う業務と重複する。OECDの調査能力は、医療制度や開発援助、労働市場機関といったあらゆる問題についてのミクロデータの収集・分析を行うことで間違いなく貴重だ。
こうした数値と分析は極めて重要な議論に情報を与えてくれる。たとえば、OECDは緊急援助の条件設定でIMFに取って代わることはできないが、ギリシャのような国に求められる構造改革について違った意見を提示するのは貴重な役割だ。
開発援助の場合、OECDによるデータの収集分析は支援の質を向上させるうえで基礎となる。たとえば、援助受け入れ国に援助国からの輸出品購入を強いる有害な「ひも付き援助」のルールの改革などだ。
OECDが真価を発揮するのは、共同で対処する問題がある政策分野に関わる閣僚の密議の場として機能する時だ。そうした問題では単独で行動する政府は不利な立場におかれてしまう。OECDの贈賄防止条約は、反汚職の法律制定のモデルを各国政府に提供するとともに、良心が乏しい国の企業よりも自国企業が不利になるのではという各国の懸念を和らげている。課税ベースの調整や移転価格に関するルール設定の取り組みは、税率が低い地域で企業が利益報告を行うゆがんだ慣行を政府が取り締まるうえで役に立つ。