【ジュネーブ=原克彦】イタリアのレンツィ首相は19日、リビア沖で約700人が乗っていたとみられる難民船が転覆した事故を受け、記者会見で「一国の対応任せにしないでほしい」と語り、欧州連合(EU)加盟国に協力を求めた。「この問題は21世紀の奴隷貿易だ」と述べ、難民船問題の根本的な解決には仲介業者を摘発し、密航船の出港を止める必要があるとの考えを示した。
レンツィ首相はEU加盟国に緊急の首脳会議を呼びかけた。「週内には確実に開けるよう努力している」という。リビア沖を海上封鎖する案については、イタリア軍に救助されることを期待する難民が増えるだけだとして、消極的な姿勢を示した。当局が既に仲介業者976人を拘束していることも明らかにした。
19日の転覆事故はリビアとイタリア南端ランペドゥーザ島の中間点辺りで起きた。約700人が乗っていたとされるが、実際の乗船者数は定かではない。19日夜(日本時間20日未明)の段階で救助されたのは28人だけで、確認できた死者数も24人にとどまっている。
難民船問題の解消については国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のグテレス高等弁務官も19日、事故を受けて「欧州全体による包括的な解決策が必要であることを示すものだ」との発表文を出した。「EUがこのような悲劇を防ぐのに重要な役割を果たすことを願う」と訴えた。
シリアやリビアでの戦闘激化を受けて地中海を渡ろうとする難民は増え、UNHCRによると4月10~17日の間だけでも1万3500人が救助された。年初からの死者数は15日までで900人に上る。難民はリビアから近いイタリアのほかに、ギリシャやスペインにも流れ込んでいる。多くは上陸後により豊かなドイツ、スイス、スウェーデンなどを目指す。