将来の人口減少を食い止めようと愛知県が環境整備に動き始めた。20日に戦略策定の有識者会議を開催。委員から相次いだ子育て環境の拡充や働きやすい職場づくりなどの意見を受け止めた。県内には2040年時点でも現在より人口が増える見込みの自治体があるだけに、今後も有識者らと知恵を絞りながら、年内に対応方針をまとめる。
同日開いた「愛知県まち・ひと・しごと創生総合戦略推進会議」の初回会合に、学者や産業界の代表者、国の出先機関の幹部らが参加した。大村秀章知事は冒頭のあいさつで「産業を強くして雇用を増やし、安心して子供を育てられるような戦略をつくりたい」と力を込めた。
県は戦略づくりの前提として試算を公表した。合計特殊出生率が現状の1.5弱で低迷が続く場合、人口は20年に746万人とピークを迎えた後、60年には613万7千人まで縮小。ピークに比べ、約130万人(約18%)落ち込むという。仮に出生率が年々回復し、40年以降2.07を維持する場合では60年に699万8千人と、ピークの20年に比べ6%減にとどまるとされる。
それでも、各地で進む人口減少のスピードが全国より緩やかなのが愛知県の特徴で、20年ごろまで人口増が進むと試算されている。人口構成が若く出生数が多い上、進学や就職で流入する人も多い。名古屋市近郊の日進市や長久手市、産業が集まる豊田市などでは、当面人口増が見込まれる。
こうした動きをいかに維持し、人口増につなげるか。同日の会議では、少子化の要因として若い女性人口が少ない点が問題となった。自動車など製造業が集まり男性が就きやすい仕事が多い一方、女性の受け皿が少ないのが要因だ。
また働くママの割合も高まっていない。6歳未満の子供を持つ30~39歳の妻で、働いている人の割合も12年で46.9%と、全国平均(48.3%)に比べて低い。厚生労働省によると、昨年10月時点で愛知県は368人の待機児童がいる。
委員からは対策を求める意見が相次いだ。中京大・内田俊宏客員教授は「研究開発や観光など、女性が働きやすい仕事がもっと増える必要がある」と強調。NPO法人アスクネットの白上昌子代表理事は「病気になった子供の面倒を見る保育サービスなどがまだ足りない。女性が活躍できる職場づくりに向け、事業者は働き方の見直しが必要だ」と訴えた。
県では女性活躍に向けワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に取り組む企業の表彰なども実施している。ただ、急激な少子高齢化にあらがうには、より積極的な対応が求められる。今後、県は市町村との意見交換会や県民を対象にした意識調査なども実施する。夏に骨子をまとめ、秋ごろに最終的な「人口ビジョン」と「総合戦略」をつくる方針だ。