甘利明経済財政・再生相と米通商代表部(USTR)のフロマン代表は21日未明、環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る閣僚協議を終えた。懸案として残るコメや自動車分野の合意には至らなかったが、両閣僚はそろって一定の前進があったと強調。日米は閣僚間での再協議も視野に5月中に大筋合意し、参加12カ国による全体交渉の加速につなげたい考えだ。
安倍晋三首相は21日の閣議前、右隣に座る甘利経財相の方に身を乗り出して「よくそんなに話すことがあるね。何時までやってたの」と冗談めかして尋ねた。甘利氏は「3時半まで」と苦笑いして答えた。
19日夜に始まった閣僚協議は、20日中に終わらず、20日午後9時半からはほぼ甘利、フロマン両氏の1対1の協議となった。休憩を挟みながら終了は21日午前3時すぎにまでずれ込んだ。
両氏は終了後、図ったかのようにほぼ同じ言い回しで会談を総括した。甘利氏が「2国間の距離は相当狭まってきたが、コメを含む農産品と自動車は依然として課題が残った」と述べたのに対し、フロマン氏も「双方の隔たりは非常に狭まったが、協議が引き続き必要だ」と発言。日米は決裂を回避し、協調ムードの演出で足並みをそろえた。
日米双方はコメと自動車で攻守所を変えて激しく応酬した。米国産コメの輸入拡大を巡っては、米国が主食米だけで年17万5千トンの受け入れを要求。今の主食米の輸入量を実質的に上回る規模の要請に、甘利氏は「聖域」であるコメの大幅受け入れは難しいとの立場を重ねて説明した。日本は加工米も含めてTPPの参加11カ国に10万トン弱の枠を割り当てる案も検討したが、規模を巡る隔たりは埋まらなかった。
一方、自動車部品では日本側が米国に関税(2.5%)の即時撤廃を求めた。米国は撤廃までの期間をできるだけ延ばす考えを示し、特に輸入額の大きい品目で平行線が続いたもようだ。米国は自動車分野で不公平な措置などがあった場合に、関税を引き上げることができる紛争処理制度の創設を求めているが、これも妥協点を見いだせなかったとみられる。
フロマン氏は21日午前7時半に羽田空港に移動し、USTRのカトラー次席代表代行など一部の事務方が東京に残った。21日も事務レベルで協議する可能性があるほか、今後「必要があれば(再び)閣僚協議を開く」(甘利氏)という。
TPPの交渉の舞台は23日から、米ワシントン近郊での参加12カ国の首席交渉官会合に移る。12カ国は5月下旬にも閣僚会合を開き、大筋合意に持ち込むシナリオを描く。その前に日米協議が決着すれば、12カ国の交渉に弾みをつけられる。日米は28日の首脳会談でも「(TPPの)戦略的重要性を確認し、交渉の早期妥結に向けて引き続いて協力していくことを確認する」(菅義偉官房長官)方針だ。