【ソウル=加藤宏一】韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の側近らの不正資金疑惑を巡り、李完九(イ・ワング)首相が辞任する見通しになった。李氏が建設会社の前会長から裏金を受け取ったとされる疑惑が深まり、与野党から辞任を求める声が高まっていた。朴大統領も辞任を受け入れるもようだ。政権側は首相辞任で国政の混乱を最小限に抑える構えだが、騒動は収まりそうにない。
韓国国務総理(首相)室は21日、李首相が南米4カ国を歴訪中の朴大統領に対し、辞意を表明したと明らかにした。李氏は主宰する予定だったこの日の閣議を欠席し、崔炅煥(チェ・ギョンファン)経済副首相兼企画財政相が代行した。
「極めて残念で首相の苦悩を感じる」。韓国大統領府は21日、辞意表明を受け、ペルー滞在中の朴大統領のコメントを発表した。朴大統領は「今回のことで国政が動揺しないように内閣と秘書室は業務を遂行しなければならない」と指示した。辞意の受け入れは27日の帰国後に判断する見通しだが、事実上、受け入れたとの見方が広がる。
与党セヌリ党の21日の幹部会議では「残念な出来事だったが、国政のために不可避な選択だった」と、辞意を歓迎する声が挙がった。野党の新政治民主連合の幹部は「国民の叱責を受け入れたのは幸い」と指摘。一方で「(李首相の辞意は)始まりにすぎない」と、疑惑が持たれる側近らの追及を急ぐ考えを示した。
朴政権の過去の首相人事は、指名された候補者が高額報酬や過去の発言が問題視されて就任前に辞退に追い込まれるなど混乱が目立った。2月に就任した李首相は、前政権時代の資源開発に絡む不正取引などで検察の捜査が進む過程で、自殺した建設会社の前会長から3千万ウォン(約330万円)の裏金を受け取った疑惑が浮上した。首相は事実関係を否定したが、説明が二転三転したことから批判が高まり、就任からわずか2カ月での辞意表明に追い込まれた。
前会長の不正資金疑惑を巡っては、李首相や金淇春(キム・ギチュン)前大統領秘書室長ら朴大統領に近い政界の重鎮8人の名があがるが、疑惑はなお晴れていない。
影響はさらに広がりそうだ。複数の韓国メディアは21日、前会長が自殺する前の7日の家族会議で「義理堅い人」として崔経済副首相や与党議員で韓日議員連盟の徐清源(ソ・チョンウォン)会長ら大統領の側近4人に言及していたと報じた。