近畿大学の岡村大治講師らはヒトの胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞を特殊な条件で培養すると、マウスの胚の中で神経や筋肉の細胞に育つ性質を示すことを突き止めた。再生医療向けに移植用の臓器を動物の体内でつくる技術につながる可能性があるという。
新規多能性細胞の樹立を発表する近畿大の岡村大治講師(6日、大阪市北区)
岡村講師が米ソーク研究所に在籍していた時の研究成果で、英科学誌ネイチャー(電子版)に7日掲載された。
ヒトのES細胞やiPS細胞はあらゆる細胞に育つ能力を持つ。ただ通常の培養法では動物の胚に入れても混ざらず、こうした変化は起こらない。
研究チームは特殊な化合物やたんぱく質などを加えてES細胞を培養した。マウスから着床後の胚を取り出し、将来下半身になる部分にこの細胞を移植すると、神経や筋肉のもととなる細胞に育った。
培養条件の工夫によってES細胞の性質が変わり、マウスの胚の中で死滅せずに増え、成長したと岡村講師は考えている。iPS細胞も同様に増えた。
今回の技術はヒトの発生の仕組み解明に役立つほか、将来、ブタの体内で人間の臓器をつくり患者に移植する再生医療につながる可能性がある。ただ実現にはES細胞などを移植した後の胚を動物の子宮へ戻す技術や、臓器につながる神経や血管をヒトの細胞から作る技術なども必要という。