大阪市を5つの特別区に分割する「大阪都構想」の是非を問う住民投票(17日投開票)前の最後の日曜日となった10日、市内では賛否両派が集会やパレードを開くなどして買い物客らに訴えた。子育てや福祉の施策はどうなるのか――。1週間後の決断に向けて、有権者らは生活に密着した視点から賛否の判断を固めつつあるようだ。
住民投票で賛成多数になると、子育て施策は各特別区が担い、教育委員会も各区ごとに設けるなど小中学校教育も区の担当だ。西淀川区の保育士、川崎あかねさん(36)は「西淀川区では地区ごとの保育園の設置に偏りがある。市より規模の小さい特別区になれば、地域のニーズに応じた対応が可能」と話し、都構想に賛成の立場だ。
一方、西成区の会社員、橋本弘聖さん(60)は「特別区の財政状況によって教育の質に差が出るのでは」と危惧する。「優秀な教師や学校施設が十分に確保できない特別区の子供は損害を被る」として反対の構えだ。
同じく特別区が担うことになる医療や高齢者施策を巡っても、評価は分かれる。浪速区の主婦、加納正子さん(73)は「市がばらばらになれば税収が分散し、長い目で見れば高齢者福祉の切り捨てにつながるのでは」との懸念から反対する。
港区の自営業、嶋田八重子さん(68)は「(5特別区へ分割され)行政単位が小さくなる方が、高齢者世帯などへの役所の目が届きやすくなる」として、賛成している。
都構想では観光戦略や大規模インフラ整備などが府に一元化されるが、この形態が地域の活性化につながるかについても見方は割れている。
西区の主婦、川西春美さん(33)はカジノを中心とした統合型リゾート(IR)推進など観光政策や大型の都市計画を府が担う点を憂慮。「現在は身近な市議を通じて大きな事業にも声を反映できるが、市議会がなくなると、大型事業に市民の声が届きにくくなる」と不安を示す。
北区の飲食店経営の佐山登さん(58)は地下鉄や高速道路の整備が府の管轄となる点を評価し、「市と市外との交通網が充実する。将来的には市内の経済にもプラスになる」と期待している。