文部科学省は12日、タブレット(携帯情報端末)などを使った「デジタル教科書」の導入について、専門家による検討会議の初会合を開いた。英語や音楽で音声を使った体験型学習などをしやすくなるメリットがある一方で、教科書の検定制度や端末の費用負担など実現には課題も多い。検討会議は2016年末までに具体的な方向性をまとめる方針だ。
検討会議は教育の専門家ら17人で構成。座長に就任した東北大大学院の堀田龍也教授(教育工学)は「情報化に対応した学習環境が議論されるなか、検討すべき要素は多いが、前向きに進めたい」と話した。
デジタル教科書は紙の教科書のデータをタブレットなどに収め、音声や動画も含んだものを想定している。英語や音楽で音声を聴けたり、算数・数学の図形を立体的に学んだり、体験型の学習をしやすくなるメリットがある。
無線LANなどが備わった教室内で電子黒板と接続すれば、教員と児童生徒や、児童生徒同士のやりとりも可能になる。
動画などの活用によって児童生徒の授業の理解が深まることが期待されている。政府の教育再生実行会議が今月14日に安倍晋三首相に提出する提言案でも「教科書のデジタル化の推進」が盛り込まれる見込みだ。
ただ、デジタル教科書の本格的な導入には課題が多い。教科書は現行法では「紙」であることが定められている。小中高校生向けの教科書は公正性や正確性の確保のため検定を経て使用されており、本格的な導入には学校教育法などの法改正が必要になる。
音声や動画などの検定方法や、著作物の権利者への支払い方法なども検討課題となっている。
また、義務教育段階の教科書は現在、毎年約400億円を投じて無償配布している。タブレットなど「1人1台」を児童生徒に配備したり、全体の通信環境を整備したりする費用負担はどうなるのか、自治体の負担分はどうなるのか、財政的な課題は大きい。視力やネット依存など児童生徒の健康面への配慮も求められそうだ。