ヤマト運輸は7日、宅配便の運送料金を値上げする方針を明らかにした。同社は宅配ドライバーの過重労働が問題になっており、値上げで収入が増えた分を処遇改善などに活用する考えだ。個人の利用者にとっては、消費増税時を除いて1990年以来、27年ぶりの値上げとなる。
ヤマト、サービス残業常態化 パンク寸前、疲弊する現場
宅配最大手のヤマトが運賃値上げに踏み切ることで、同業他社も値上げに動いたり、インターネット通販業者が「送料無料」などのサービスを見直したりする可能性がある。
ヤマトの運賃は、荷物のサイズと運ぶ距離に応じて変わる。最も小型の荷物を関東から中部地域に運ぶ場合は、税込みで756円。どの程度値上げするかは検討中で、今秋にも実施したい考えだ。
大口の法人客には割引運賃を適用しており、ここ数年で割引幅を縮小してきた。ただ、宅配業界の競争が激しく、個人も含めた運賃全体の値上げは見合わせていた。大口顧客であるネット通販大手アマゾンなどとは、すでに実質値上げ交渉に入っている。
宅配をめぐっては、ネット通販の急拡大に伴って配達する荷物が急増し、人手不足と長時間労働が常態化していた。最大手のヤマトも、ドライバーへの残業代の未払いがあるとして昨夏に横浜北労働基準監督署から是正勧告を受け、全社的な未払い分の調査に乗り出している。
ヤマトは春闘で、労働組合から荷物量の抑制を要求されている。運賃を値上げすれば、利用者が減る可能性もあるが、荷物1個あたりのもうけは増える。ヤマト運輸の2017年3月期の荷物量は、前年比8%増の18億7千万個で過去最多となる見通しだ。