【イスタンブール=佐野彰洋】欧州・中東向けの自動車輸出拠点であるトルコで、ストライキに伴う自動車工場の操業停止が相次いでいる。6月7日に総選挙が迫り、経済損失の拡大を防ぎたい政府が事態の収拾に乗り出す事態となっている。
14日以降、賃上げを求める従業員のストが起きているのは、仏ルノーのブランド車を生産するオヤク・ルノーと、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)ブランドの車を生産するトファシュの2社。合計でトルコの自動車生産の約4割を占める。いずれも外資とトルコの大手財閥との合弁だ。
両社が工場を置く西部ブルサは「トルコのデトロイト」とも呼ばれる車産業の集積地。労働組合の呼び掛けに応じる形でストは周辺の部品メーカーにも広がっている。
20日には部品供給の問題を理由に米フォード・モーター系のフォード・オトサンがイスタンブール寄りのコジャエリにある2工場で操業を停止した。一部の従業員がブルサのストに同調したとの報道もある。
事態の長期化は輸出減少や工場の人員削減などにつながり、減速気味の景気をさらに冷やしかねない。ババジャン副首相は20日、「関係閣僚が全当事者と協議している。数日以内の解決を望む」とテレビの取材に語った。
トルコにはトヨタ自動車、ホンダ、いすゞ自動車も生産拠点を構える。これまでに日系メーカーへの飛び火はないが、今後部品供給が滞る恐れもある。
国際自動車工業連合会によると、トルコの2014年の自動車生産台数は約117万台にのぼる。各社は、関税同盟を結ぶ欧州連合(EU)向けの輸出拠点として生産を強化している。