世界貿易機関(WTO)に加盟する国や地域の間で通関業務を迅速化する「貿易円滑化協定」(TFA)が22日、発効する見通しになった。複数の関係筋が明らかにした。貿易にかかるコストが減ることで輸出が増えるなどの経済効果が期待されている。
関係筋によると、22日に中東とアフリカの最大4カ国が受諾書をWTO事務局長に寄託し批准する。WTOに加盟する164の国・地域のうち、108カ国・地域が受諾しているが、これで発効要件の「3分の2以上」に当たる110カ国・地域以上の受諾が達成される見通し。
貿易円滑化は、輸出入手続きの窓口を単一化したり、電子化を推進したりして、通関業務をより迅速に進めコスト削減をはかるのが目的。貿易のコストが約15%減り、輸出が増えることで「1兆ドル(約113兆円)」の経済効果を期待する試算もある。
2013年末にインドネシア・バリ島であった閣僚会合で合意後、実施のためのルールである協定づくりが進められ、14年11月のWTO一般理事会でTFAが採択された。日本は15年に受諾した。
01年に始まった多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は、農業や鉱工業品などの主要分野の交渉が暗礁に乗り上げている。TFA発効は、保護主義の風潮が広がる中での多国間交渉の具体的な成果になる。(ジュネーブ=松尾一郎)