【ロンドン=共同】世界動物園水族館協会(スイス)は20日、和歌山県太地町の追い込み漁によるイルカの入手を禁止するとの公式通知を同日、日本動物園水族館協会から受けたとし「歓迎すべき進展だ」と評価する声明を発表した。世界協会が日本協会の会員資格を復活させる可能性が高まった。世界協会は近く理事会で資格回復の可否を決める方針だ。
世界協会のジェラルド・ディック常務理事は共同通信の電話取材に対し資格問題は10月の年次会合を待たず、理事会で「できるだけ早く決定する」と強調。「(決定は)今週か来週かもしれないし、1カ月後かもしれない」と述べた。
声明は日本協会の決定について最終的な評価を下すため、日本側にさらに詳しい報告を求めると説明。国際的に協調し、野生動物の状況を改善し保護する世界協会の取り組みの正しさが改めて確認されたとしている。
世界協会が公表した通知文書によると、日本協会は「一部会員が太地町から捕獲された野生イルカを購入している問題について、世界協会の公平で忍耐強い対応を評価している」と指摘。今回の決定を説明し、会員資格の回復を要請した。反対意見には触れていない。
世界協会は追い込み漁を「非人道的で倫理規定に反する」と非難し、捕獲したイルカを水族館が買い取ることに反対。日本協会と10年以上にわたり交渉を重ねてきた。昨年には、買い取りの2年間凍結という妥協策を提案したが、日本協会に拒否されていた。
全加盟施設に買い取りを禁じる日本協会の今回の方針転換は妥協策よりも踏み込んだといえるだけに、世界協会は「大幅な改善」(ディック氏)と受け止めている。ただ同氏は生け捕りにされたイルカを「太地町の業者が主に中国に向けて高値で売る例が増えているようだ」と懸念。世界協会としての働き掛けには限界があると認めた。