日本と太平洋地域の島しょ14カ国の首脳らが集まった太平洋・島サミットは23日、海洋秩序の維持などでの協力を盛り込んだ共同宣言を採択して閉幕した。安倍晋三首相は記者発表で、島しょ国への関与を強める中国を念頭に法の支配の原則を確認したと強調。太平洋の島しょ地域でも日本と中国がせめぎ合う構図を浮き彫りにした。
パラオのレメンゲサウ大統領と共同記者発表する安倍首相(23日、福島県いわき市)
共同宣言は「福島・いわき宣言」と題し、(1)防災(2)気候変動(3)環境(4)人的交流(5)持続可能な開発(6)海洋・漁業(7)貿易・投資・促進――の7分野での協力強化を打ち出した。首相は今後3年間で550億円以上の援助を表明。「私たちの友好と協力の関係をさらに高い次元に引き上げるための礎になった」と訴えた。
今回、中国を意識した対応として象徴的だったのは「東アジアと米大陸を結ぶ重要な海上中継地点」(政府関係者)と位置づけられるフィジーの厚遇ぶりだ。フィジーは2006年のクーデターで軍政に転じた後、島サミットへの招待を控えていたが、14年に民政復帰したのを受けて9年ぶりに招いた。
安倍首相は19日、首相官邸でフィジーのバイニマラマ首相と会談し、夜には公邸で昭恵夫人とともに夕食会を催した。人口90万人の国への接遇としては異例の厚遇でもてなした視線の先には中国がある。軍政下のフィジーに日米が接触を控えていた間、中国は経済支援を積み増し、14年には習近平国家主席も訪問した。
島しょ14カ国のうち、中国と国交のある国は8カ国で、台湾と外交関係を持つのは6カ国。今回の島サミットは中国寄りに傾いた島しょ国を日米側に引き戻し、米国のアジア重視戦略を側面支援する意味があった。共同宣言は「フィジーの民主化の着実な定着」への期待を盛り込んだ。
首相は島サミットの首脳会議で、戦後70年の節目を踏まえ「平和国家として国際協調主義に基づいた貢献をしたい」との決意も語った。平和国家としての歩みを訴える場とし、共同宣言では日本の姿勢に支持を取り付けた。中国や韓国が日本の歴史問題を繰り返し国際社会に訴える「歴史戦」に備えた形だ。
共同宣言は日本が目指す国連の安全保障理事会改革への協力も盛りこんだ。島しょ国は小国でも集まれば国連加盟国数の約7%になる。安倍政権の支持基盤である保守層を意識し、戦没者遺骨収容への協力も確認した。