車を盗んだとして窃盗などの罪に問われた大阪府門真市の男(43)の公判で、大阪地裁(長瀬敬昭裁判長)は5日、警察が裁判所の令状なしで実施した全地球測位システム(GPS)を使った捜査を違法と判断し、この捜査で得た証拠を不採用とする決定をした。
男の弁護人によると、こうした司法判断は全国初という。
決定によると、大阪府警の捜査員らは男らの所在捜査のため、約6カ月間にわたって裁判所の令状を取得しないまま捜査対象者の車にGPS端末を取り付けた。
長瀬裁判長は決定理由で「大きなプライバシー侵害を伴う捜査だった」と指摘。捜査員らがGPS端末の取り付け、取り外しのため私有地に立ち入っていることも挙げ、令状に基づく強制捜査が必要だったと指摘した。
令状が発付された可能性が十分高かったのに、令状請求の検討すら行わなかったのは「警察官らの令状主義軽視の姿勢の表れ」と批判した。
これまでの公判で、検察側はGPS捜査について「尾行などの補助手段なので任意捜査できる」と主張していた。
起訴状によると、男は2012年2月から13年9月にかけて関西を中心に車などを盗んだとされる。大阪や京都など5府県警の合同捜査本部が13年12月に逮捕し、大阪地検が起訴した。
GPS捜査を巡っては、大阪地裁の別の裁判長が今年1月に「違法ではない」との判断を示している。