老人ホームなどの入居権をめぐって現金をだまし取る手口の特殊詐欺被害の相談が急増していることが20日、国民生活センターへの取材で分かった。専門家は「少子高齢化が進み、資産が集中する高齢者世帯が狙われている」と注意を呼びかけている。
国民生活センターによると、相談件数(未遂を含む)は2010年度に7件だったが、その後急激に増加を続け、14年度は約87倍の608件だった。詐欺の電話を受けたのは60代以上がほとんど。実際に被害が生じたケースでは、平均で1人当たり数百万円がだまし取られた。
同センターによると、老人ホームのパンフレットを送って「入居希望者がいるが、入居権はあなたしか申し込めない。名義だけでも貸してほしい」と依頼。その後、国税庁や警察といった公的機関を装った電話で「名義貸しは違法だ」などとして示談金を要求してくるという。
高齢者の親切心につけ込み、人助けを装うのが特徴。電話口に複数の業者や公的機関を名乗る者が代わる代わる登場し、高齢者の不安をあおってくる。
国民生活センターは「不審な電話があった場合、すぐに電話を切って近くの消費生活センターなどに連絡してほしい」と呼びかけている。
立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「1人で抱え込まないようにすることが大事。家族など周囲に相談したり、インターネットで調べたりして、詐欺かどうかを見極めてほしい」と話している。〔共同〕