試合時間は90分を過ぎ、追加タイムに入っていた。日本の佐々木監督は交代選手を岩渕1人しか使っていない。延長突入を覚悟していたとき、「イングランドにとってアンラッキーだった」と宮間が言う決勝点が生まれた。右からの川澄のクロスを相手DFが触るとボールはクロスバーに当たってゴールの中へ。
イングランドを破って決勝進出を決め、宮間(右)に駆け寄る日本イレブン=共同
相手DFをゴールに向かって走らせる形をつくったから生まれた決勝点ともいえる。「中央に大儀見さんと岩渕さんがいたのでああいう形になったのだと思う」と川澄。佐々木監督は「日本のみなさんが後押ししてくれた得点ではないでしょうか」と話した。
シンプルに押し込んでくるイングランドの手口を分かってはいても、苦しんだ。日本の後方からの組み立てのパスがいまひとつだったこともあり、後半の出だしは立て続けにピンチの連続。ただし瀬戸際に立たされてからのしぶとさは「なでしこ」の真骨頂だ。焦らずじれず、70分に岩渕を送り出す。切り札ドリブラーの個人技で流れを取り戻した。
前半のPKによる宮間の先制点をお膳立てしたのは、阪口と有吉の「日テレ・コンビ」だ。31分、前線の選手が引いてボールを受けると見せかけたとき、入れ替わるように右の大外から有吉が抜け出した。DFラインの位置にいた阪口から、イングランドのお株を奪うロングパス。受けた有吉を相手DFがたまらず倒してPKを得た。
「球が左サイドにあるときも自分の右サイドをみてくれている。だから(阪口に)渡った瞬間、高い位置を取れる。ベレーザ(日テレ)のあうんの呼吸です」と有吉。キッカーの宮間は、あえてGKをじらすようにゆっくりと助走をとり、GKが右に飛ぶギリギリまで引きつけて、左へ決めた。
前評判のそれほど高くなかったチームが、すべて1点差の試合をものにして決勝進出。相手は11年の前回W杯、12年ロンドン五輪に続いて米国だ。世界大会では3大会連続の顔合わせ。主将の宮間は「五輪では金をもっていかれた。W杯は渡さないつもりでやりたい」と力強く話した。
(岸名章友)