日本の気象を宇宙から見守る新型気象観測衛星「ひまわり8号」が7日、正式に運用を開始した。最新のセンサーを備え、性能は“先代”7号より大幅にアップし、気象衛星としては世界で初めてカラー画像も撮影できる。局地的な豪雨など異常気象の監視に役立つことが期待される。
「ひまわり8号」は解像度が2倍になり、カラー画像も撮影できる(7日、気象庁)
「今日から気象観測の新しい時代が始まる」。ひまわり8号はこの日午前11時、高度約3万6千キロの静止軌道上で運用を始めた。気象庁では記念式典が開かれ、大画面に映し出された衛星画像が7号から8号に切り替わると拍手が起こった。
現在、日本の南には3つの台風があり、この台風の監視が初仕事になりそう。操野年之・気象衛星課長は「確実に新しいデータを届けたい」と気を引き締めた。
昨年10月に打ち上げられ、これまでは試験運用の形で使われてきた。気象庁は当初、7月1日の運用開始を検討したが、同日に「うるう秒」の挿入があったため、7日とした。「七夕を意識したわけではない」(同庁担当者)。
8号の解像度は7号の2倍。カラー画像が撮影できるため、「白黒では雲と判別しにくかった黄砂の飛散状況も分かる」(気象庁)。これまで雲と見分けることが難しかった火山灰も、高度や温度で区別できる。実際に試験運用中の5月29日、口永良部島(鹿児島県)の爆発的噴火で火山灰が広がる様子をとらえた。
「日本付近」「台風周辺」などの狭い範囲であれば、撮影間隔がこれまでの30分から2分30秒に短くなり、台風の渦の動きなどをリアルタイムに近い形で観測できる。局地的な豪雨をもたらす積乱雲は急速に発達するため観測が難しいとされるが、撮影間隔の短縮により速やかな防災情報につながる可能性がある。
8号の優れた性能を気象予報にどう生かすかは今後の課題だ。現在は、7号を含む観測データをもとにスーパーコンピューターで大気の流れを予測。この「数値予報モデル」を踏まえて予報を出している。
8号になると観測データが大幅に増えることになるが、すべてを活用できるようになるのは数年先になる見通し。気象庁は「台風の正確な進路予想や、局地的な集中豪雨の防災対策につながる可能性があるが、予測技術の開発はこれから」と説明している。
一方、7号は気象衛星としての運用を終えるが、16年度までは8号のバックアップを担う。16年度には8号と同型で性能もほぼ同じ「ひまわり9号」が打ち上げの予定だ。