今年の司法試験で問題の作成などに関わった明治大法科大学院の男性教授が、教え子の受験生に問題の内容を漏らしていた疑いのあることが7日、関係者への取材でわかった。法務省も事態を把握しており、男性教授や受験生から漏洩の経緯について事情を聴くなど調査を進めている。
東京都千代田区の明治大(7日)
関係者によると、漏洩が疑われているのは明大法科大学院の60代の男性教授。5月に実施された司法試験の問題を作る考査委員を務めていた。教授は試験前、教え子だった受験生の20代女性に、自身が作成に関与した問題の一部を教えた可能性があるという。
法務省によると、考査委員は非常勤の国家公務員で、教授は守秘義務違反に問われる可能性もある。同省の司法試験委員会は国家公務員法違反容疑での刑事告発も視野に検討している。
問題作成に携わる考査委員は法科大学院を修了予定の学生や修了生など、受験資格のある学生らへの指導をしないことが義務づけられている。考査委員は法科大学院の教授や裁判官、弁護士などから法相が任命。作問や採点をするほか、合否の判定基準を合議で決めている。
明大法科大学院は昨年の司法試験で365人が受験し63人が合格。合格率は17.3%で全体の平均を下回った。今年の司法試験の合格発表は8日に予定されている。
司法試験を巡っては2007年にも、考査委員を務めていた慶応大法科大学院の男性教授が試験前に学生向けの勉強会で出題に関連する内容を教えていたとして委員を解任された。男性教授は依願退職した。弁護士らに刑事告発されたが、東京地検が不起訴処分にしている。
政府は今年6月、法曹需要の伸び悩みを背景に、司法試験の合格者数を年間1500人以上と従来目標から半減させる改革案をまとめた。法律家を目指す人口が減り、今後は合格率の低い法科大学院の淘汰が進むとみられている。