【マニラ=佐竹実】アジア開発銀行(ADB)は22日、2015年のアジア新興国の国内総生産(GDP)成長率予想を5.8%に下方修正したと発表した。3月時点予想から0.5ポイント低く、01年実績(4.9%)以来14年ぶりの低さになる見通しだ。中国経済の減速に加え、先進国の景気回復も遅れているためだ。米国の利上げ観測を背景とするマネー引き揚げや通貨安も、域内経済に影を落としている。
ADBはアジア新興国の16年の成長率予想についても、3月時点の6.3%から6%に引き下げた。
先進国(日本、米国、欧州)の15年の成長率は、同2.2%から1.9%に、16年は2.4%から2.3%に下方修正した。ADBは「米国経済が15年前半に寒波などの影響を受けたほか、日本の個人消費や投資の回復が鈍い」と分析する。
中国の15年の成長率は、7.2%から6.8%に下方修正した。投資や輸出の不調が主な原因だ。中国の減速を受け、アジア域内の輸出も伸び悩んでいる。そのため東南アジアの15年の成長率は、4.9%から4.4%に引き下げた。
新興国では、米国の利上げをにらんで現地通貨が売られやすい状態が続いている。ADBは、「マネー引き上げと通貨下落に直面しており、米国が利上すれば状況はさらに悪化する可能性がある」と指摘。「現地通貨建て債券市場の育成などを通じて外貨建て債務の依存度を減らし、外的ショックへの耐性を高めなければならない」と警鐘を鳴らしている。
ADBは毎年春に「アジア経済見通し」を発表しており、今回はその修正版。先進国を除くアジア大洋州の45カ国・地域が対象だ。