【ワシントン=川合智之】カーター米国防長官は27日、米空軍が2020年代半ばに投入を目指す新型長距離爆撃機「LRS―B」の開発企業として米防衛大手ノースロップ・グラマンを選んだと発表した。米メディアによると同省は約80~100機の調達を計画しており、開発費を含めた事業総額は800億ドル(約9兆6千億円)規模に達する見通し。米議会が軍事費の削減を掲げるなか、老朽化した装備を効率的に置き換え、南シナ海で緊張が高まる中国などの脅威に対抗する。
記者会見したカーター氏は「米の優位を保つ技術的飛躍だ」と述べ、「今後50年の戦略的投資になる」と強調した。
新型爆撃機はレーダーに探知されにくいステルス性能が高く、核兵器を搭載可能な有人機。老朽化した現行爆撃機の「B2」「B52」の後継機種で、40年までに入れ替えを進める。米メディアによると既に小型試験機の開発は進んでおり、近く試験飛行も可能という。
ノースロップ・グラマンは最新鋭ステルス戦闘機「F35」を開発するロッキード・マーチンや、空中給油機「KC46」を手がけるボーイングの各陣営と契約獲得を競っていたが、国防総省は開発・発注先が集中することを避けた格好だ。
新型爆撃機の導入は米軍の対中戦略の鍵を握る。高性能の弾道ミサイルなどを着々と配備し、有事に米軍の接近を阻む中国の軍事戦略に対抗するうえで、米軍は性能が劣る旧型機の世代交代が不可欠とみて入れ替えを急ぎたい考えだ。