インターネットバンキング利用者のIDやパスワードを盗み取るウイルスを保管していたとして、警視庁サイバー犯罪対策課は4日までに、札幌市の中学2年の少年(14)を不正指令電磁的記録保管容疑で逮捕した。同課は少年がネット掲示板でウイルスを不特定多数の顧客に販売していたとみており、悪質性が高いと判断したもようだ。
ネットバンキングの不正送金被害が高水準で続いている背景として、ウイルスがネット上でやり取りされる実態があるとされる。未成年者でも簡単に入手し、犯罪に手を染める恐れがあるとみて警視庁などは警戒を強めている。
逮捕容疑は今年6~9月、自宅のパソコンや米国のファイル共有サーバーに、ウイルスを作成するプログラムを保管した疑い。
同課によると、少年が保管していたのは、ネットバンキング利用者のIDやパスワードを盗み取る「ゼウス」と呼ばれるウイルス。少年はネット上で入手したといい、ネット掲示板に「サポート付きで販売しています。24時間対応です」などと書き込み、1万円で購入する客を募っていたという。
客は少年が指定したファイル共有サイトにアクセスし、ウイルスをダウンロード。コンビニなどで購入できるプリペイドカードを使って代金をやりとりする仕組みだったとみられる。同課は不正指令電磁的記録供用容疑でも捜査する方針。
サイバー犯罪対策課の捜査員が7月、掲示板の書き込みを発見し、共有サイトにあったウイルスの分析などを進めていた。
ゼウスはネットバンキング利用者のパソコンに侵入し、銀行などのサイトに接続すると、偽画面を表示し、暗証番号などを入力させて盗み取るのが一般的。不正サイトを閲覧するだけで感染するタイプもあり、世界中で被害が拡大している。