【パリ=竹内康雄】ポルトガル議会(一院制、定数230)は10日、コエリョ首相率いる政府が提出した経済政策計画を反対多数で否決した。内閣への事実上の不信任となる。緊縮財政に反対する左派政党が政権獲得に意欲を見せており、政権交代の可能性が出てきた。金融市場では、欧州債務危機から立ち直りつつあった同国経済への先行きへの不安が高まっている。
10月4日の総選挙でコエリョ首相が属する社会民主党(中道右派)など与党連合は最大勢力を保ったものの過半数を割り込み、政権運営は不安定さを増していた。同月末に第2次内閣が発足したが、10日の採決で経済政策の方針が否決されたことで早くも行き詰まった。
カバコシルバ大統領が次の首相を指名するが、主要政党との調整で数週間かかるとの見方もある。欧州メディアによると総選挙が実施されたばかりな上、大統領選も2016年初めに予定されるため、解散総選挙は当面できないという。
最大野党、社会党(中道左派)のコスタ党首は「我々は緊縮財政をやめる機会を得た」と語り、次期首相に意欲を示した。政権樹立に向け、急進左派の左翼ブロックや共産党、緑の党と協議を進めている。社会党は緊縮財政の穏やかな修正を図る方針だが、共産党などは強硬で緊縮策の即時廃止を求めている。
左派政権が誕生すれば、ポルトガルの財政再建路線が揺らぐ懸念がある。このところの金融市場では足元の政治の混乱を嫌気して国債価格が不安定になっている。アルブケルケ財務相は10日、「投資家の信頼をつなぎ留めるのが重要だ。緊縮策をやめればギリシャのようになる」と警告した。
ポルトガルは11年に財政状況が悪化し、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)に総額780億ユーロ(約10兆3000億円)の支援を要請した。直後に首相に就いたコエリョ氏は増税など国民生活に痛みを強いる改革を断行し、14年には実質成長率が10年以来の前年比プラスに転じ、支援から脱却した。だが失業率は高いままで、改革の果実は必ずしも国民生活に届いていなかった。
欧州では12月にスペインが総選挙を控えており、反緊縮の動きが広がる可能性もある。