トランプ米政権は16日、議会に提案する国務省関連の予算削減について、「大半が対外援助に集中する」と明らかにした。アフリカなどで飢餓が深刻化し、国連が「国連創設以来、最大の人道危機」と警鐘を鳴らす中、主要な援助国の方針転換に戸惑いの声が上がっている。
途上国援助や環境予算を大幅カット トランプ政権予算案
軍拡路線のトランプ政権は2018会計年度に「米国第一予算」を掲げ、外交を担う国務省と、海外援助を担う国際開発局の予算を全体で約28%、101億ドル(約1兆1400億円)減らす方針だ。内訳について、行政管理予算局のマルバニー局長は会見で「削減の大半は直接、対外援助に集中する」と答えた。
世界では、南スーダンやイエメンなどで2千万人以上が飢餓状態にあるとされる。援助削減による悪化を懸念する質問に、マルバニー氏は「今回の方針は驚きではない。大統領は選挙で『海外の人々に使う資金を減らし、国内の人々により多く使う』と繰り返してきた。それを予算で実行しようとしている」と答えた。
国連のグテーレス事務総長は16日、報道官を通じ、テロ撲滅には「軍事支出以上のものが必要」と懸念を示し、紛争予防や開発などでテロの根本原因に対処しなければならないと強調した。米国は国連で通常予算の22%、PKO予算の28%超を負担する最大の財政貢献国。
トランプ政権は5月に詳細な予算案を示す見通し。米国では予算案を出す権限は議会が握っている。対外援助の削減は米国の安全保障を損なうという懸念が議会から出ており、折衝は難航が予想される。(ワシントン=金成隆一)