神奈川県平塚市で昨年9月、故障で停車中の作業車に中型観光バスが追突、16人が重軽傷を負った事故で、事業用自動車事故調査委員会は11日、バスの男性運転手(57)が左胸の苦しさから前かがみになり、前を注視できなくなったのが原因とする報告書を公表した。
運転中に狭心症を発症したとみられ、追突の約1.2キロ手前で冷や汗など体調異変を感じていたが運転を続けていた。
事故調は、「東京春日部観光」(東京)が運転手を雇用する際に異常を把握しながら1カ月近く乗務させ、点呼で体調把握をしないなど運行管理が不適切だったと指摘。観光バスなどを運行する全国の運送事業者に対し、健康管理を徹底し、適切な運行指示をすることなどを求めた。
運転手は前かがみになった後、時速70キロ台で約200メートル走行。回復して視線を上げたが作業車の約26メートル手前まで迫っており、ブレーキを踏んで右にハンドルを切ったが間に合わなかった。
事故は昨年9月26日午後4時5分ごろ、平塚市の小田原厚木道路で発生。走行車線に止まっていた高所作業車にバスが追突。バスの運転手と添乗員が重傷、乗客13人全員と作業車の1人が軽傷を負った。
昨年6月に発足した事故調の調査対象として初めて、社会的影響が大きい場合などに指定される「特別重要調査対象」となっていた。〔共同〕