日銀の原田泰審議委員は11日、宇都宮市で開いた金融経済懇談会で講演し、日銀が実施している量的・質的金融緩和への様々な批判に対して反論した。円安が進んでも輸出が大きく増えていないことについては「円高を放置したことによる産業基盤の海外移転が原因」と指摘。「リーマン・ショック直後に現在のような金融緩和政策を取っていれば、このような状況は避けられた」と述べた。
金融緩和は財政規律を弱めるとの批判については、金融緩和の目的は物価目標を達成し実体経済を改善するためにあると説明。国債を発行しやすくなれば財政規律が弱まるとすれば、増税でも同様の効果があることになってしまうと反論した。その上で「財政は政府と議会が責任を持って規律を維持すべき物で、金融政策とは関係がない」と話した。
いずれ金利が上昇局面に入った際に大量に国債を抱えた銀行が多額の含み損を抱えるとの指摘については、一時的な損失拡大の可能性を認めた。ただ、銀行の総資産に占める損失の度合いが小さいことや、景気回復すれば貸出先の健全度が上昇することから「景気回復で金利が上がった時には、銀行の経営状況は良くなっているはずだ」と述べた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕