洪水による被害を受けた北朝鮮・咸鏡北道南陽=9月10日、中国・吉林省延辺朝鮮族自治州図們、平賀拓哉撮影
北朝鮮の朝鮮中央通信は10日、「米国政府が朝鮮北部地域での昨年の水害で、人道支援を提供することにした」と報じた。米韓関係筋によれば、米国のオバマ前政権が、対北朝鮮制裁をめぐる国連での米中間の取引の結果、国連児童基金(ユニセフ)を通じて100万ドル(約1億1千万円)の人道支援を行うことにしたという。
同筋によれば、昨年11月末に国連安全保障理事会が新たな対北朝鮮制裁決議を採択した際、米国が中国に制裁強化への同調を要請。中国は応じる代わりに、制裁の対象は金正恩(キムジョンウン)政権に限るべきだと改めて主張したという。
オバマ政権も、北朝鮮による人権侵害を批判したが、北朝鮮当局と市民を区別するため、国際機関が要請した水害に対する人道支援に応じる必要があると判断した。
米政府側はこうした趣旨を韓国側に伝え、理解を求めたという。韓国の朴槿恵(パククネ)大統領の職務執行権限が昨年12月、国会の弾劾(だんがい)決議で停止されたことも影響したとみられる。韓国は昨年、北朝鮮による核実験などに反発し、人道支援にも応じない政策に転じた。世界中の在外韓国公館を通じ、日米を含む各国に対して北朝鮮への人道支援について「金正恩政権や軍に流用される可能性がある」と主張。慎重な検討を要請していた。
国連人道問題調整事務所によると、北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)などを昨年8月末から9月初めに襲った台風による洪水被害の死者・不明者は500人を超え、約6万9千人が住まいを失った。(ソウル=牧野愛博)