【ニューヨーク=稲井創一】米総合化学首位のダウ・ケミカルと同大手のデュポンが経営統合する交渉を進めていることが分かった。8日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)電子版など複数の米メディアが伝えた。両社とも新興国の景気減速やドル高などで経営環境が厳しく、統合で競争力を高める。
両社の時価総額は単純合計で1170億ドル(約14兆円)に達する。年間の売上高は930億ドル規模(2014年12月期)となり、化学部門の売上高でドイツのBASFを抜いて世界最大の化学メーカーとなる。ただWSJによると両社は統合が実現した後、事業を再編し、3社に分割することを検討しているという。事業の重複を整理し、経営を効率化する狙いとみられる。具体的には農業関連と高機能製品、化学品の3分野への分割が取り沙汰されている。
米デラウエア州にあるデュポンの施設(2012年撮影)=ロイター
特に穀物価格の下落の影響を受け種子や農薬などの農業関連ビジネスは両社ともに低迷しており、両社の首脳陣の間では農業関連事業の切り離しが議論になっていた。汎用化学品でも中国勢の攻勢などを受け、世界市場で単独で勝ち残る戦略が描きにくくなっていた。
業績低迷が続くデュポンは今年10月にエレン・クルマン最高経営責任者(CEO)が退任し、エドワード・ブリーン氏が後任のCEOに就任した。ダウのアンドリュー・リバリスCEOも物言う株主(アクティビスト)から経営改善を要求されていた時期があり、両社は共同で抜本的な経営基盤の強化に踏み切る。