【ブリュッセル=森本学】ユーロ圏19カ国の銀行の破綻処理が1日から一元化される。破綻処理費用を賄う550億ユーロ(約7兆2300億円)のユーロ圏の共通基金が同日、運営を始める。国ごとに異なっていた破綻処理を統一することで、債務危機の再発を防ぐ狙いがある。ユーロ圏が目指す「銀行同盟」の柱のひとつとなる。
欧州は2010年以降、主に南欧諸国を発端とする債務危機にたびたび見舞われた。この際、国ごとにばらばらな金融行政が信用不安を拡大させたとされる。問題を抱える銀行の国の政府は財政負担や自国経済への影響を懸念し、破綻処理に踏み切る判断が遅れがちになるからだ。
このためユーロ圏は破綻処理を一元化し、危機時に迅速に問題銀行の破綻処理を決定・実行することとした。破綻処理の決定は欧州中央銀行(ECB)の代表と欧州委員会、問題銀行を抱える国の金融当局で構成する「欧州破綻処理委員会」の提案に基づいて、欧州委員会が決める。
破綻処理への公的資金の投入を避けるため、処理費用を賄うユーロ圏共通の基金「欧州破綻処理基金」も1日付で設ける。ユーロ圏内の銀行からの拠出金で、16年から8年かけて総額で550億ユーロを積み立てる。積み立てが終了するまではユーロ圏加盟国が必要な場合につなぎ融資を提供して財源を賄うことで合意している。
ユーロ圏は債務危機の再発防止策として、金融行政の統合策である「銀行同盟」の実現を目指している。銀行監督、破綻処理、預金保険の一元化という3本柱のうち、すでに銀行監督はECBによる一元化が14年11月にスタート。今回は破綻処理も統合され、残るは預金保険の一元化のみとなった。
ただ預金保険の一元化を巡る論議はなお難航している。欧州委は15年11月、金融機関が破綻した際に10万ユーロまでの預金を保護する預金保険制度を24年までにユーロ圏内で一元化する案を示した。多くのユーロ圏加盟国が賛同する一方、ドイツのメルケル首相は反対の姿勢を表明した。ドイツ国内では、預金保護の資金を十分に持たない加盟国の預金者の保護も自分たちが負担することになるとの不安が根強い。