週刊誌が報じた「政治とカネ」を巡る疑惑は安倍政権を支える重要閣僚の辞任に発展した。28日、突如として辞意を表明した甘利明経済財政・再生相。「デフレ脱却のための阻害要因は取り除く。私も例外でない」。時折、言葉を詰まらせ、悔しさがにじむ。秘書の監督責任を認め、「暗たんたる思いだ」とハンカチで何度も口元をぬぐった。
「閣僚の職を辞する」。続投との予測もあった甘利氏が辞任の考えを表明したのは、記者会見で約30分にわたって金銭授受疑惑の経過などを説明した後だ。
「今はデフレから脱却できるかどうかの瀬戸際で、阻害要因は取り除かねばならない。私も例外ではない」と険しい表情で声を絞り出す。「政治家としての矜持(きょうじ)に鑑みて決断した」と辞意を明かし、深く頭を下げた。
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉などの実績を強調し「アベノミクスの司令塔」との自負を示した一方で「忙しすぎて地元に目が向かなかった」と反省の弁も。「天を仰ぎ見る暗たんたる思い」と悔やんだ。
午後5時ごろ、内閣府で始まった記者会見。ダークスーツに身を包んだ甘利氏は冒頭、国民に向けて「ご心配をかけていることを深くおわびします」と謝罪し、調査結果が書かれた資料を早口で読み上げた。
大臣室や神奈川県大和市の地元事務所で現金計100万円を受け取ったことは認めつつ、「内ポケットに入れた」とする週刊誌の記事には「品格を疑われる行為。そんなことをするわけがない」などと反論。身ぶりを交え、語気を強める場面もあった。
秘書が繰り返し接待を受けていたとの報道については「記事で初めて知り、愕然(がくぜん)とした。なぜ自分に相談してくれなかったのか」と不満を漏らした。
甘利氏によると、今回の報道後、千葉県の建設会社の社長から「口裏合わせをしよう」との電話が毎日のように秘書にあったという。「(金を渡したとされる総務担当者が)『ありもしないことを言った』と言えば済む」などと持ちかけられたといい「当然、秘書は社長の誘いに乗っていない」と説明した。
自身や秘書が総務担当者と面会していたことも認め「来る者は拒まずの姿勢でないと(選挙で)当選できない。今回は甘かった」と唇をかんだ甘利氏。議員辞職について問われると「一からやり直す」と話した。TPPは来週に署名式が迫っていた。「正直に言えば、署名式は出たかったですね」。寂しさに満ちた表情を見せた。