大分銀行は22日、姫野昌治頭取(63)が代表権のある会長となり、後藤富一郎専務(60)が頭取に昇格する人事を発表した。後藤新頭取は「農民の心を持った商人として地域を耕していく」と述べ、成長市場の東京など大分県外で融資規模を拡大する「狩猟型」とは一線を画す意向を示した。姫野頭取が打ち出した地元回帰路線を引き継ぎ、さらに加速させる。
4月1日に就任する。後藤新頭取は「(大分県は)人口も中小企業も減る。どこまでを地域の中核として残すかということまで考えて、種を植えたり耕したり一緒にやっていく」との認識を示した。そのために「姫野頭取の打ち出した地域密着化戦略を高度化する。投資のメリハリを効かせ、選択と集中で体質の強い銀行にしていきたい」と抱負を述べた。
姫野頭取は「価格競争に甘んじれば途端に赤字経営になる」として就任から6年間で東京の大企業向け融資を減らし、地元企業向けを増やす地域密着化戦略を推し進めてきた。地元中小企業向けの融資比率は6割を切るところから約64%まで回復。相対的に金利の高い融資が増えた結果、他行と比べて貸出金利が下げ止まるなど「数字に表れ始めた」(姫野頭取)。
後藤新頭取もこの路線を鮮明にする。後藤氏は営業企画部長などを経て2010年から監査役に就いた。業務をチェックする立場ながら、同年に就任した姫野頭取に地域への提言をした。姫野頭取は「縮む市場で他の金融機関とは違う個性を発揮することが大事。これだけ熱い思いを持った人が経営に関わらないと物事を変えていけない」と、選出の理由を説明した。
後藤新頭取は他銀行との再編に関しては「決して規模が大きいところが生き残れる時代でもない」としたうえで、「選択肢としていろんな業務を他の銀行とやっていくこともおかしくないが、地方銀行として使命を果たすことが前提」と強調した。「今考えていることはないが、将来にわたって全くないと言えるものがあるわけではない」とも述べ、含みを残した。