日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)によると、中国5県の企業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス10と前回調査(昨年12月)より3ポイント悪化した。中国経済の影響で製造業を中心に悪化したが、地域や業種によっては改善傾向もあり、ばらつきが見られる。円高基調なども背景に、先行きへの不透明感は高まっている。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。調査は2月25日から3月31日にかけて、中国5県の821社を対象に実施し、815社の回答を得た。
製造業は4ポイント悪化しプラス9、非製造業は2ポイント悪化しプラス11だった。年明けからの円高や受注減少などにより、造船・重機、その他輸送用機械がゼロと前回のプラス11から大きく低下した。
景況感は業種や地域間でばらつきも見られる。広島県では全産業の景況感はプラス21と2ポイント改善。特に自動車が28ポイント改善しプラス73と、消費増税前の2014年3月以来の高水準となった。日銀広島支店の金田一弘雄支店長は「好調な自動車などの恩恵を受け、下請けや中小企業にも景気回復の動きが波及してきた」と話す。
岡山県は全産業で3ポイント低下したものの、非製造業は1ポイント上昇した。「外商などでは富裕層の消費意欲は以前と変わらない。化粧品などの雑貨、食料品も好調。催事の客の入りも多い」(岡山高島屋)という。福地慶太岡山支店長は「内需は底堅い。設備投資にも期待している」と話した。
一方、景気の先行きへの懸念は高まっている。全産業の先行きはプラス1と、9ポイントの悪化を見込んでいる。中国や新興国経済の影響に加え、年明けからの円高基調などが懸念材料とされている。
リチウムイオン電池、自動車部品、電子部品などの生産設備を製造している島根自動機(松江市)の新宮邦隆社長は「1ドル=100円に近づくようだと輸出関連の製造業の顧客に影響がでそうだ」と話す。
今回の調査は日銀がマイナス金利政策を導入して以降初めて。マイナス金利政策の効果に関して、鈴木純一下関支店長は「ローン金利低下で住宅展示場の来客が増えているという話はあるが、実際の販売や設備投資、貸し出しに変化が出てはいないようだ」と話す。