母親が食べているエサを横からねだるカピバラの赤ちゃん=竹谷俊之撮影
■360度動画「いきもの目線」
人に懐きやすく、穏やかな性格で知られる「カピバラ」は、どこの動物園でも人気者だ。広島県福山市の福山市立動物園では今夏、2年ぶりに赤ちゃんが生まれた。園の協力で、カピバラ一家の小屋の中に360度カメラを設置し、親子の仲むつまじい姿を撮影した。
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この一家の赤ちゃんは4頭。ごわごわした堅い毛の親と違って、サラサラした柔らかい感じの毛をしている。訪れた時、4頭は寄り添って昼寝中だった。カメラを設置するために、飼育員の杜師(とし)弘太さん(26)と一緒に小屋の中に入ると一家そろって「誰だ お前は!」というような目線を送ってきた。
杜師さんは、カピバラの好物のイネ科の草を持ち出した。親たちはすぐに、ムシャムシャと音を立てながら食べ始める。赤ちゃんたちも負けじと食べ始めた。
小屋の中で姿勢を低くしながら杜師さんとリモート映像を確認していたところ、一頭の赤ちゃんの口元が画面に映っているのに気づいた。と、思った瞬間、画面は一瞬真っ暗に。次に映ったのは、白い前歯らしきもの。レンズフィルターを丈夫な前歯で「ガリガリ…」。フィルターの傷にピントが合うようになってしまったため、撮影は終了した。それでも、動物たちの予測がつかない行動は、面白い映像が撮影できたという裏返しでもある。
杜師さんによると、カピバラはネズミの仲間で、齧歯(げっし)目では世界最大種。南米原産で、川のほとりの草原や湿地帯に生息している。手足の指の間に水かきがあり、泳ぎが得意。のっそりとしたイメージだが、走ると意外に速いという。(竹谷俊之)