益城町役場に避難した人たち=15日午前1時50分、熊本県益城町、小宮路勝撮影
震度7を観測した熊本県益城町は熊本市に隣接する人口約3万5千人の町。地震で約2820人が自主避難し、余震が続く中で不安な一夜を過ごした。
熊本で震度7 これまでの経過を時系列で
特集:熊本地震
町保健福祉センターは900人を超える町民らが避難し、廊下やロビーにも人があふれた。職員が配る毛布が足りず、毛布の入っていた段ボールを床に敷いて横になる住民も。犬や猫などのペットを連れて避難した住民らが、建物の外で夜を明かす姿も見られた。救援に来た迷彩服の自衛隊員も、水や菓子パンなどの食料を運び込んだ。
同町の「有料老人ホーム桜花」の入居者9人も職員と一緒に避難した。高齢者の多くは車椅子に座ったまま。入居者の白木トミエさん(88)は「こんな揺れを経験したことはない。緊張で眠れなかった」。認知症の人もおり、施設の職員が「大丈夫、大丈夫」と声をかけ続けていた。施設の奥村哲生代表(35)は「人工透析を受けている人もいる。入居者の体調が心配です」と話した。
看護師の山本春美さん(50)は、自宅2階のソファで座っていた時に激しい横揺れに襲われ、突然、家の電気が消えた。テレビやタンスが倒れ、足の踏み場もないほどになり、転倒した母は「戦争の時の防空壕(ごう)のよう」と話したという。
余震は断続的に起きた。避難者はそのたびに、顔を上げたり、隣の家族の背中をさすったりして、不安な様子だった。
町総合運動公園の体育館に70代の両親と避難してきた江森勝幸さん(51)は、「少しうとうとしたけど、余震で起こされた。これが続くのかと思うとイヤだな」とうつむいた。両親の健康への不安も募る。
約150人が一夜を過ごした同町公民館前の駐車場。夜間は冷え込み、町を行き交う救急車や消防車のサイレンが響いた。寒さを和らげようと、役場職員が毛布のほかにアルミの梱包(こんぽう)材も配った。段ボールを重ねて寒さをしのいだという女性(86)は「気力だけで一晩過ごした」と疲れた表情だった。
空が明るくなり始めた午前5時ごろから、自宅の様子を見に帰る人が目立った。近くのマンションに住む城戸順子さん(80)は「夫が家を見てきたが、足の踏み場もない状態。片付けをしたいが余震が怖くて戻れない」と話した。
午前6時過ぎには、役場職員が非常食のビスケットを配った。母や姉らと避難した塘田(ともだ)俊輝さん(12)は「おなかがすいた。少し硬いけどおいしい」。前夜、熊本市内で家族で買い物をしていた時に地震が起きた。益城町内の自宅マンションに戻る途中の道は所々、隆起していたという。避難した駐車場では、余震のたびにアスファルトの地割れが広がった。「夜はパニックだった。これからどうなるのか心配です」