米大統領選で19日に実施されるニューヨーク州予備選に向け、民主、共和両党の各候補が火花を散らしている。全米最大の都市を抱え、メディアも集中する州だが、大統領選で注目を集めることはあまりなかった。ただ今回は、候補者選びに大きく影響する上、同州とつながりの深い候補も多く、力が入っている。
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「私は、クリントン氏の判断力を疑問視している」
ニューヨークで14日に開かれた民主党討論会で、サンダース上院議員(74)はこう語気を強め、クリントン前国務長官(68)がイラク戦争に賛成票を投じたことやウォール街から多額の資金提供を受けていることなどを問題視した。
これに対してクリントン氏は、「ニューヨークの有権者は私を2回当選させ、オバマ大統領も国務長官に指名するほど、判断力を信用してくれた」と反論。地元紙とのインタビューでサンダース氏が中心政策の「大銀行解体」について聞かれ、具体的な答えに詰まったことを挙げ、逆に判断力を疑問視した。
また、2014年のイスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの侵攻に関し、クリントン氏がイスラエル側に理解を示したのに対し、サンダース氏はガザ侵攻を「過度な攻撃だ」と批判。「我々が正義と平和を追求するなら、ネタニヤフ首相がいつも正しいとは限らないと言う必要がある」と強調した。
クリントン氏は上院議員時代はニューヨーク州選出で、今も陣営本部がある本拠地。ここで勝てないと、予備選や党員集会で連勝を続けるサンダース氏の勢いを止めることも困難になる。ほぼすべての世論調査でサンダース氏に10ポイント以上の差をつけているが、3月中から州内で集会を重ね、夫のクリントン元大統領も何度も訪れるなど必死だ。
バーモント州選出の上院議員を務めるサンダース氏も、生まれ育ったのはニューヨークで縁が深い。「ニューヨークのほとんどは私たちを歓迎している。ウォール街を除いては」と訴え、金融機関からの献金が多いクリントン氏との違いを強調している。
共和党で首位を走るトランプ氏はニューヨーク生まれで現在も地元。ウィスコンシン州の予備選でライバルのクルーズ上院議員に敗れるなど、ここのところ苦戦が続いているだけに巻き返しに懸命で、世論調査で大きくリードしているにもかかわらず、地元で集会を繰り返している。
ニューヨーク州は民主党が圧倒的に強いため、大統領選の本選ではあまり重視されない。また、予備選も日程などの関係からこれまでは注目されなかった。ただ、両党の激しい指名争いを受けて、近年にない関心を集めており、ニューヨーク・タイムズは「意義がある予備選は1992年以来」と表現している。(ニューヨーク=中井大助、金成隆一、ワシントン=佐藤武嗣)