韓国の旅客船セウォル号沈没事故で姉が犠牲になった朴イェジンさん。追悼行事では涙をこらえながら姉に向けて書いた手紙を読んだ=16日午前、京畿道安山市、東岡徹撮影
304人の死者・行方不明者を出した韓国の旅客船セウォル号沈没事故から16日で2年がたった。各地で追悼集会が開かれ、遺族らは悲しみを新たにした。しかし、原因究明は途上で、漁船など海の事故も増えている。事故の教訓は十分に生かされていない。
事故では修学旅行中だった高校2年の生徒250人、教員11人が死亡、行方不明になった。高校がある京畿道安山市では、追悼行事が開かれ、犠牲になった女子生徒、朴イェスルさんの妹、朴イェジンさんが姉に向けた手紙を読んだ。イェジンさんは「まだお姉さんの声が聞こえ、お姉さんの姿が目に浮かぶ。私たちはまた会えるよね」と語りかけた。一方で、「事故で私たちは国家と政治家たちの無能さ、無関心を初めて知った」と述べ、これからも事故の真相究明を求めていくと訴えた。
事故の真相究明をめぐっては特別立法で官民による特別調査委員会が設けられた。しかし、遺族らでつくる「4・16家族協議会」の兪敬根(ユギョングン)執行委員長は11日の記者会見で事故の原因や救助が遅れた理由などがまだ明らかになっていないと批判。「事故の問題点がわかってこそ、安全な社会を作ることができる」と強調した。
実際、海の事故は減っていない。海洋水産省によると、2015年に起きた漁船や貨物船などの事故は2101件。セウォル号事故が起きた前年より771件増えた。
セウォル号の船体は事故が起きた珍島沖の海底に沈んだままで、7月の引き揚げを目標に作業が進められている。(安山=東岡徹)
◇
〈韓国旅客船セウォル号沈没事故〉 2014年4月16日、韓国南西部の珍島沖で急旋回し、船体が傾いて沈没した。過積載だったのに加え、貨物も十分に固定されておらず、運航会社や関係機関もチェックしていなかった。事故発生直後に船長らが乗客を放置して脱出。関係機関の救助にも問題があり、被害が広がった。