高速道路上に崩落した跨道(こどう)橋の「府領第一橋」。撤去作業が始まっていた=17日、熊本県甲佐町、竹野内崇宏撮影
16日未明に熊本県内で起きた本震で、同県甲佐町の九州自動車道をまたぐ跨道(こどう)橋のひとつが崩落した。国土交通省によると、全国の高速道に跨道橋は約5800(2014年10月現在)あるが、専門家は「跨道橋が完全に崩落した前例は記憶にない」と話している。
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熊本県によると、この橋は県道の「府領第一橋」(長さ61メートル)で、1974年に旧日本道路公団が建設し、その後県に移管された。西日本高速道路(NEXCO西日本)によると、鉄筋コンクリート製の橋桁を鋼製の支柱6本などで支える構造だったが、地震の揺れなどで支柱が外れて落橋。衝撃で橋桁が折れたとみられるという。
自動車や人の被害はなかった。
高速道路は対向2車線ずつに加え、近くの緑川パーキングエリアに出入りする車線もあるが、崩落した橋で完全にふさがれている。
高速道路上の跨道橋をめぐっては、会計検査院が13年に全国で安全点検に不備があると指摘。これを受けて国交省が、橋を管理する都道府県や市町村に点検や補強を呼びかけていた。今回の府領第一橋は14年の点検で支柱のさびが問題視されていた。耐震診断や工事については熊本県は18日、「調査中」としている。
西日本高速は17日に撤去作業を始めたが復旧の見込みが立たない状況で、幹線道路の遮断が、避難物資の輸送や災害復旧の障害になっている。
現地を調査した幸左賢二・九州工業大教授(橋梁〈きょうりょう〉工学)は「高速道路の管理者と跨道橋の管理者が違う場合は、耐震化の意識に差がある場合もある。補修や耐震化に十分な予算が必要だ」と話している。(竹野内崇宏)