レジ前の棚に並ぶこだまさんの著書(手前上段)=大阪市浪速区のジュンク堂書店難波店
■オトナの保健室
書店で「例の本」と呼ばれているヒット作がある。40代の主婦が書いた私小説で、口に出しづらいタイトルだから。つづられているのは、心に深い傷を負い、夫婦関係にもがく女性の20年。著者のこだまさんにメールでインタビューし、本に込めた思いを聞いた。
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「例の本」のタイトルは「夫のちんぽが入らない」(扶桑社)。こだまさんが同人誌に寄稿した短編を大幅加筆したものだ。大学時代に夫とつきあい始め、セックスや不妊に向き合い続けた日々を端正な文章でつづる。教諭時代の学級崩壊との闘い、母親との葛藤も重く描かれる。1月に発売され、たちまち5刷り13万部を超えた。読者は女性が6割で10~80代と幅広い。とくに30~40代の共感を呼んでいる。
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――タイトルが衝撃的です。
交際から20年、夫とまともにセックスができない劣等感をストレートに表しました。この結婚生活はかっこいいタイトルではなく、「ぽ」という間の抜けた響きが似合う。
――「ひとつの家で、男でも女でもない関係で暮らす」とあります。もやもやしませんか。
私の持病(自己免疫疾患)が悪化したこともあり、7年くらい前から一度もありません。私自身はもやもやすることはないです。できる、できないに関わらずセックスのことを考えるのが重荷だったと気が付きました。私の心身がこんな状態なので、夫が風俗へ行くのも自由だと思っています。
――なぜ夫とだけ……なのでしょう。医者に行こうとは。
サイズも理由でしょうが、「好きな人とこんなことをしたくない」と思う私の心の問題もあるかもしれません。かなり内気な大学生で、誰かに相談しようとは考えませんでした。「セックス=悪」だったので、犯罪を告白するくらい勇気のいることでした。ローションを使えば少しだけ入ることがわかり(裂けて流血しますが)、私たちは「これで十分」と納得してしまいました。