1970年代に問題となった「部落地名総鑑」の写真を示す部落解放同盟の片岡明彦副委員長(右)=東京・霞が関、北野隆一撮影
部落解放同盟と組坂繁之委員長ら被差別部落出身者211人は19日、川崎市の出版社と経営者ら2人を相手取り、原告1人あたり110万円、計約2億3千万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。出版社側が戦前の調査報告書「全国部落調査」にもとづく被差別部落の地名リストを収録した書籍の復刻出版を予定し、ネット上のウェブサイトにリストを掲載していることは「部落差別を助長する悪質な行為」だとして、出版禁止やサイト削除を求めている。
「全国部落調査」復刻出版を差し止め 横浜地裁が仮処分
同和地区の地名掲載サイトに削除命令 横浜地裁が仮処分
訴えによると出版社側は2月、「全国部落調査」を復刻した書籍の販売をネット上で予告。解放同盟側が中止を求めたのに対し、横浜地裁は申し立てを認め、出版や販売を禁じる仮処分決定を3月28日に出した。
地名リストを掲載したサイトについては、法務省東京法務局が3月29日に削除するよう「説示」したが、出版社経営者の男性(37)=神奈川県座間市=は応じなかった。横浜地裁相模原支部が解放同盟側の申し立てを求め、4月18日にサイトの削除を命じる仮処分決定を出した。
提訴についてこの男性は「全面的に争う。歴史的な文書なのに、なぜ部落解放同盟が公開を禁止しろと言えるのか」と話している。