同級生と米の袋を保管場所から運び出す園田晃大さん(中央)=熊本市中央区
一連の地震の「本震」から1週間を迎えた23日、週末の時間をボランティア活動に充てようと、大勢の人たちが全国から熊本県内の被災地に駆けつけた。各地を記者が訪ねると、10代や20代の若者の姿が目立つ一方、東日本大震災などで活動してきたベテラン組も。それぞれの活動先で、支援を待っていた被災者から歓迎の声が聞かれた。
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熊本地震 災害時の生活情報
震度7を2度観測し、被害の大きい益城(ましき)町。鹿児島市の自営業山岸史人さん(41)と中学3年の菜々未さん(14)親子は初めてのボランティアだった。午前6時から車で3時間かけて到着し、災害ボランティアセンターで受け付けを済ませると、7人グループで高齢者夫婦宅の片付けに向かった。食器棚やタンスが倒れ、物が散乱。足の踏み場もないほどだ。
知人の安否を気遣って熊本を訪ねた際、崩壊寸前の宇土市役所や車中泊の人々を目の当たりにした菜々未さんが「何かできないかな」と史人さんに相談し、参加を決めた。
重い食器棚を持つ父の傍らで、菜々未さんはほうきを手に動き回った。友達にこの経験を話すつもりだ。「何かしたいっていう輪が広がるかもしれないから」
福岡市の職業訓練校の学生、黒木誠剛(せいごう)さん(23)も約3時間かけて車で来た。2012年の九州北部豪雨や14年の広島土砂災害でも活動。この日は壊れた家具を運び出し、瓦や壁のがれきを撤去した。夜は福岡市に帰り、24日午前に戻ってくる予定だ。「福岡なら帰れる。宿泊施設は被災者や他のボランティアに使ってもらいたい」
大分県日出(ひじ)町から駆けつけた尾畠春夫さん(76)はボランティア歴25年。東日本大震災で大分と宮城県南三陸町を車で往復しながら計500日間支援に当たったという。活動開始前、センター側にスコップやヘルメットがもっと必要だと指摘した。男性職員(36)は「私たちにも初めての経験。言われて気付いたことがたくさんあって助かります」。
熊本市ではこの日、センターの受け付け分だけでも約1千人が活動。地元の若者たちの姿もあった。
「ゴミはありますか?」。市役所に配置された千葉県出身で同市西区に住む大学生、高橋啓太さん(21)は避難者に声をかけていた。自宅アパートは16日未明の本震で室内に物が散乱し、22日まで断水。それでも友人とLINE(ライン)で連絡を取り合い、避難所の整理などをしてきた。「自分たち以上に大変な人がたくさんいる。何かできれば」
物資の集約場所の同市中央区の観光施設駐車場。中学時代の同級生3人と参加した同市南区の高校2年、園田晃大さん(16)は段ボールに入った野菜や米袋などを配送車へ運んだ。高校は地震で休校中。22日に友人と益城町を訪れ、全壊した住宅を見て思った。「家にいても仕方ない。できることはボランティアだ」
被災者の期待も大きい。同市東区の中学校に避難している赤星直美さん(53)は「明るく声をかけてくれるだけでもありがたい。自宅が壊れたので、住む先が決まったら荷物の運搬を手伝ってほしい」と話した。
この日は南阿蘇村のセンターにも144人が登録して活動した。ボランティアの炊き出しの列に並んでいた藤本美恵子さん(60)は自宅が一部損壊して片付けに追われているといい、「ボランティアの方々の助けは本当にありがたい。これから生活再建が始まるので、継続して支援に来てもらえたらうれしい」と話した。
■ボランティアセンターはまだ一部
被災地では宿泊先確保の難しさなどから、全国から参加者を受け付けるボランティアセンターはまだ一部だ。このため、この日は住所地を問わず受け付ける熊本市や益城町に希望者が殺到する形になった。
東京都の会社員脇本ひかるさん(26)と横浜市の飲食店従業員安藤明香さん(26)は知人と計4人で益城町のセンターに行ったが、すでに定員が埋まっていた。熊本市のセンターに移ってみたが同じ状況のため、フェイスブックで探した民間団体で物資の仕分けなどをすることにした。
事態の変化で、センター側が得た情報に基づいて割り振る仕事と現場の状況が合わなくなることもある。熊本市ではこの日、1グループ50人が派遣先で「すでにボランティアが入っています」と断られた。センターを通さずに来た人たちがすでに活動していた。市役所に移ったが、必要数は10人程度。ごみ拾いやテントの設営を手伝うと、昼ごろには仕事がなくなった。
センターが開設できていない自治体もある。1400棟以上が全半壊した西原村での開設はもう数日先の見通しだ。22日に始まった住宅の応急危険度判定が進まないと安全が守れない、という。村社会福祉協議会は「使用可能」となった住宅から順に片付けのボランティアを派遣する考えだ。大型連休ごろを受け入れのピークにしたいという。