台南で開かれた「いす-1グランプリ」。衣装に趣向を凝らす参加者も目立った=24日、鵜飼啓撮影
台湾南部・台南で24日、キャスター付きの事務用イスに乗って速さを競う「いす―1グランプリ」が開かれた。京都府京田辺市発祥の町おこしイベントで、海外での開催は初めて。若者に人気の地元商店街の店主らが「面白いことをやりたい」と誘致した。
開催したのは、台南市中心部の正興街や近くの商店主ら。6、7年前までは数店舗しかなかったが、今では飲食店など三十数店舗に増えた。レトロな雰囲気の店が多く、週末は大勢の若者でにぎわう。個人営業の店が多く、これまでにも不用な物ばかりを集めたイベントなど一風変わった催しを有志で企画してきた。
リーダー的存在の雑貨屋店主、高耀威さんによると、イベントに熱心に取り組むのは、商店街の団結や地域住民らとの関係を深めるためだ。地域に注目が集まり、進出に関心を持つチェーン店も出てきた。だが、こうした店が増えるともともとの雰囲気が失われてしまいかねず、イベントを通じて地域に対する考え方を共有していきたい、との思いだという。
いす―1グランプリにはネット上の動画を見て関心を持ったという。台南市政府の助けを得て、グランプリを始めた京田辺市のキララ商店街と連絡を取り、運営方法やルールなどを学んだ。3月末にあった京田辺市のレースに台南から出場するなど、交流も重ねた。
台南でのグランプリは30メートルのタイムを競うレースと、3人一組で制限時間内に全長186メートルのコースを何周できるか競う2時間と1時間の耐久レースが行われた。耐久レースには計約100組が出場。最初は笑顔だった出場者らだが、周回を重ねるごとに疲労の色も。台南の成功大学3年生、郭重邑さん(21)は同級生とチームを作って出場した。毎日、学校で練習したというが、「思っていたよりずっと大変。でも楽しい」と話していた。
会場にはキララ商店街事業協同組合理事長で、「日本事務いすレース協会」代表理事の田原剛さんも駆け付けた。これまで日本では12カ所に広がり、台北でも開催したいという声が上がっている。田原さんは「自分たちからは『やってください』と言ったことはない。ニュースや動画を見た人が開催に名乗りを上げている。台南での開催を機に世界に広がる可能性もある」と話していた。(台南=鵜飼啓)