事故現場のマンションの壁に触れる男性=25日午前8時27分、兵庫県尼崎市、伊藤進之介撮影
乗客106人と運転士が亡くなり、562人が負傷したJR宝塚線(福知山線)脱線事故から、25日で11年を迎えた。事故現場は、昨年12月から一部保存工事を開始。仮囲いが取り巻き、景色が一変したマンションの前で、遺族らは静かに祈りを捧げた。
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事故が起きた午前9時18分の直前、青空が広がる事故現場を、快速電車が速度を落として通り過ぎた。愛する人が最期を遂げたマンションを訪れた遺族らが黙禱(もくとう)を捧げる中、電車の警笛が十数秒間、響き渡った。列車内にいた乗客も次々に手を合わせた。
JR西日本は、昨年12月にマンションの一部保存や周辺整備工事に着手。9階建てのマンションは、上層階を取り壊して4階までを階段状にして保存する。現在は防音パネルなどを設置中。工事は2018年夏ごろ完了予定で、マンション東側に広場や慰霊碑を設ける。この日は遺族らに配慮し、作業はしなかった。
事故現場近くのホールでは、JR西主催の「福知山線列車事故追悼慰霊式」があり、遺族と負傷者らが参列。黙禱(もくとう)の後、同社の真鍋精志社長は「11年の間には皆様一人ひとりが多くの夢や希望を実現し、充実した人生を送られていたでしょう。心から深くおわび申し上げます」と謝罪。「私どもの安全の取り組みに、終わりはありません」と改めて安全を誓った。