人工知能(AI)やロボットによる自動化などで、2030年度の雇用は今より735万人減る――。経済産業省は27日、AIやビッグデータなどがもたらす「第4次産業革命」が雇用に与える影響を試算した。一方で、構造改革で新たな雇用が生まれれば、雇用減は161万人減にとどまるとの分析も示した。
AIやIoT(モノのインターネット)やロボットなどへの対応を話し合う有識者会合で示した。試算では、AIなどが人間に置き換わる職種の分析や、過去約20年間の産業ごとの消長の傾向などを踏まえて試算した。
「現状放置」のシナリオでは、スーパーのレジ係や製造ラインの工員といった仕事がAIやロボットに置き換わるため、低賃金の一部職種を除いて軒並み雇用が減り、30年度の雇用者数は15年度から1割超減ると予測した。研究開発など付加価値の高い仕事も、第4次産業革命で優位に立った海外企業に奪われる可能性があるという。
一方、人材育成に力を入れたり、成長分野に労働力を移動させたりする「変革シナリオ」では、付加価値の高いサービス業などが成長し、雇用減を補う高所得の仕事が増えると分析。2%の実質経済成長率も達成できるとした。
経産省は「痛みを伴う転換をするか、じり貧かの分かれ目にある」とし、企業や系列の壁を越えたデータの活用や、労働力が移動しやすい「柔軟な労働市場」などが必要としている。(高木真也)