原発事故の避難指示区域と復興庁が試算した特定復興拠点の概要
東京電力福島第一原発事故の帰還困難区域のうち、5年後をめどに国の避難指示が解除される「特定復興拠点」の面積は5%程度にとどまる、との試算が明らかになった。被災自治体はより広い面積を求めるとみられるが、国は予算の制約に加え、多くの住民の帰還は見通せないと慎重だ。将来復興庁が廃止された後、面積が広がるかどうかも見通せない。
帰還困難区域は原発事故の影響で放射線量が年50ミリシーベルトを超えた地域。福島県の7市町村にまたがり、対象人口は約2・4万人。現在も立ち入りが制限されている。
政府は同区域にわずかでも住民が戻る拠点を設け、2022年をめどに避難指示を解除する方針。災害公営住宅などの建設だけでなく、他地域では東電が負担する除染も税金を使う。拠点は今秋から順次決まる。
決定を前に、復興庁は20年度までの4年間で使える復興予算(福島県外も含め4・6兆円)を基本に、帰還が見込まれる住民の数や、農地の再利用の見通しなどから拠点の対象面積を試算。結果は政府関係者によると、計1500~2千ヘクタールで、東京都新宿区とほぼ同程度だ。計3万3700ヘクタールの帰還困難区域全体の4~6%にとどまる。
原発が立地する双葉、大熊両町は計1千ヘクタール前後と、拠点の面積の半分近くになる。ただ、2町は地域の再生などを念頭に、計3千ヘクタールを整備するよう求めるとみられる。大熊町の場合、除染廃棄物の中間貯蔵施設のため、1100ヘクタールを国に渡す予定で、同町は「同等の面積を国が整備するのは当然」と主張する。自治体側は夏以降、国に整備を求める面積を示すが、試算よりも広くなる可能性が高い。
■帰還検討する世帯は1割、復興拠点拡大には慎重
復興庁の住民意向調査によると、帰還を考えている世帯は原発周辺4町では1割ほどにとどまる。同庁幹部は「解除後の状況を見て、拠点を広げるか検討したい」とするが、「予算を増やしても帰還の効果は限定的だ」として、被災自治体が求める拠点面積の拡大には慎重だ。
復興庁は法律で20年度末までに廃止される。避難指示が22年にも一部解除された後、復興や住民の帰還を長期的な視点で見定める同庁に代わる組織は決まっていない。試算以上に拠点が広がるかどうかも、被災自治体の復興が進むかどうかもはっきりしない状況だ。(編集委員・大月規義)