裁判官らの前に立ち無実を訴える朴龍晧さん=28日、大阪地裁、イラスト・岩崎絵里
放火殺人事件の容疑者とされて20年余り。大阪市東住吉区の小6女児死亡火災で無期懲役とされた朴龍晧(ぼく・たつひろ)さん(50)が再び、大阪地裁の法廷に立った。28日に始まった再審初公判。当初の裁判では届かなかった「無実」の訴えを、改めて裁判官にぶつけた。
小6焼死の再審開始「僕は無実」 検察側、有罪取り下げ
午前9時半、朴さんは弁護団5人とともに大阪地裁へ入った。紺色のジャケットに帽子をかぶり、まっすぐ正面を見据えて歩いた。
報道陣や支援者らで91の傍聴席がほぼ埋まった201号法廷。西野吾一裁判長が午前10時すぎに開廷を告げ、朴さんは証言台の前に背筋を伸ばして立った。
「僕は放火殺人をしていません。全く身に覚えがない。僕は無実です」。起訴内容への意見を問う裁判長に対し、はっきりした口調でそう述べて一礼した。
検察官が「すべての証拠を検討した結果、有罪の主張・立証は行わない」と告げて「しかるべき判断」を裁判長に求めると、弁護人のそばに座る朴さんは検察官に厳しい視線を向けた。
有罪の柱になった自白調書はこう書かれている。「車からガソリン7・3リットルをポリタンクに移し替えて床にまき、ライターで火を付けた」「高さ約40センチの炎を跳び越えて外に出た」
法廷では、この不自然さを検証した弁護団の燃焼実験の映像も流された。ガソリンをまき始めて20秒後には風呂釜の種火に引火し、車庫を模した実験小屋はたちまち火の海に。やけどもせず逃げ出せるはずのない結果が示され、朴さんは唇を固く結んで見つめた。
午後からは朴さんの被告人質問がある。なぜ、うその自白をしてしまったのか。捜査、公判のどこに問題があったのか。自分なりの考えを述べるつもりだ。
■取り調べ中「足を組むと蹴られた」
「21年前の心理は、『心が自殺した』という表現が最も合うと思っています」
朴さんは今月上旬、朝日新聞記者に手紙を寄せた。「判決までは慎みたい」と詳細は控えつつ、うその自白に至った心境や再審公判への思いを明らかにした。
警察の取り調べはどんな様子だったのか。朴さんは過去の公判でこう説明した。「取調室に張られた娘の写真を見ろと強要され、足を組むと『ちゃんと座れないのか』と言われ、右のくるぶしを蹴られた」