水俣病問題は解決したと思うか
水俣病の公式確認から5月1日で60年となるのを前に朝日新聞社と熊本学園大学水俣学研究センター(熊本市)は共同で、水俣病の患者・被害者らにアンケートを実施した。6割超が「水俣病問題は解決していない」と回答。多くは、救済されていない被害者や、患者への認定や損害賠償を求める人たちが今もいることを理由に挙げた。
この10年で水俣病の典型的な症状がひとつでも悪化したと答えた人は回答者の9割超に達した。差別や偏見を近年も受けたとする人が2割超いた。国は「最終解決」を掲げた救済策による救済の申請を2012年に締め切ったが、問題の根深さが改めて示された。
水俣病では、公害健康被害補償法で国の認定基準に基づき、熊本、鹿児島両県が認定した患者と、未認定だが症状が確認され、医療費などを受ける被害者がいる。ほかにも症状を訴え、患者認定を求めている人や裁判で損害賠償を求めている人らがおり、患者・被害者らを含め、複数の団体をつくっている。
アンケートでは、こうした11の団体・施設を通じ、会員ら8948人にアンケート用紙を送付。2610人から回答を得た。回答者は40歳代~100歳代で平均年齢は70・3歳。回答者の6割が認定患者や過去2回の政治決着で救済を受けるなどした人で、3割は認定申請・訴訟中などの人だった。
水俣病問題の現状について尋ねたところ、「解決していない」が65・8%、「解決した」3・1%だった。医療費などを受ける被害者でも5~6割が「解決していない」と答えた。未解決の理由(複数回答)では「まだ救済されていない被害者がいる」79・6%、「患者認定を求める人や、損害賠償を求めて裁判を起こしている人がいる」62・7%、「(原因企業の)チッソや国、熊本県がきちんと責任を認めていると思えない」44・9%――と続いた。