水俣病が公式確認されてから1日で60年となった。熊本県水俣市では患者団体主催の犠牲者の慰霊祭などが開かれ、公害病を二度と繰り返さないことや、被害者を救う取り組みを続けることを参列者が誓った。今年は余震が続く熊本地震の影響で、市などでつくる実行委員会が毎年この日に開いてきた慰霊式は延期された。
「公害の原点」とも言われる水俣病は1956年5月1日に患者の多発が水俣保健所に届けられ、公式確認された。熊本、鹿児島両県など行政による認定患者は2280人、未認定だが症状のある被害者は約7万人。今も2100人以上が患者への認定を求め、約1300人が損害賠償を請求し訴訟をしており、解決には至っていない。
1日、犠牲者らをまつる水俣市内の「乙女塚」では患者団体「水俣病互助会」主催の慰霊祭があり、約150人が参列。77年に、生まれながら水俣病だった胎児性患者の長女(当時21)を亡くした同会長の上村(かみむら)好男さん(81)は「患者と認められていない人の救済など、60年経っても解決すべきことがたくさんある。行政や企業は被害者の側に立つ気持ちを持ってほしい」。胎児性患者の坂本しのぶさん(59)は「60年って(今年の)自分の年と同じだなと思う。だんだん、前みたいに歩けなくなって不安になる。水俣病と、熊本の地震で亡くなったたくさんの人に、お祈りしました」と語った。(田中久稔)