居間で遊びながら寝転がる親子=伊藤進之介撮影
日曜の午前。遊び疲れて抱っこをせがむ2歳の息子を真ん中に、妻(47)、夫(46)と3人、川の字になってじゃれあった。「パパとママと3にん」。息子の口癖がでる。
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「40代半ばで親になって、今が一番幸せ」。2年前に特別養子縁組で8カ月の息子を迎えた大阪府の夫婦は口をそろえた。
2人は妻が29歳の時に結婚。自然妊娠せず、34歳から月約20万~50万円かけて体外受精の治療を始めた。正社員の妻は、煮詰まらないよう、趣味の楽器演奏も続けながら取り組んだが、だんだんつらくなった。
排卵のための自己注射、激痛が伴う採卵。妊娠検査は陰性の連続で、病院のトイレや帰り道で泣いた。2人は子どものいる親戚や友人まで避けるようになった。妻は卵子提供や養子を迎えることも夫に相談したが、「覚悟ができない」と言われ、治療を続けた。
44歳。妻は、体外受精に使える卵ができなくなった。採卵は26回、費用は1千万円になっていた。
妻は明るくなった。「やれることはやった。私は十分幸せ。もう諦めよう」。夫婦は、旅など趣味を満喫するようになった。
「特別養子縁組で子どもを迎えないか」
半年後の正月休み、夫が打ち明けた。40歳を過ぎてから、考えてきた選択肢だった。夫は、妻が無理に明るく振る舞っているように見え、「僕に任せて」と説得。「今さら」と妻は怒ったが、4日間話し合い、「あなたがリードしてくれるなら」と同意した。
まず児童相談所を通して、里親の資格を取る研修を受けた。新聞で特別養子縁組を希望する子どもの記事をチェックするようになった。
夫婦は「血のつながりのない子をかわいいと思えるだろうか」と不安もあった。だが、乳児院で抱っこした赤ちゃんのあたたかさに、「血縁など気にしない」と強く感じ始めた。