各国首脳らとタックスヘイブン(租税回避地)の関係を暴いた「パナマ文書」を受け、米政府は5日、企業の実質的な所有者の情報を報告させる規制案など複数の対策を公表した。世界では税逃れ防止策を強化する動きが広がっており、米国も対応に乗り出した。
特集:パナマ文書
米政府は今回、銀行や証券会社などの金融機関向けの規制の最終案を公表した。企業が口座を開設する際、その企業の株式の25%以上を保有する個人の身分を確認するよう求める。また、企業を設立する際、実質的な所有者の情報を財務省に提出することを義務づける法案の素案を議会に送った。
米国では企業を設立する際、実質的な所有者の情報の提供を求める規制がなく、ペーパー会社などを通じた脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)の温床となっているとの批判がある。政府が所有者情報を管理することで、犯罪捜査などに生かすことを目指す。
また、世界では来年以降、銀行の口座情報などを相互に自動交換する枠組みを始めるが、独自の取り組みを進める米国は一方的な交換しか認めていない。米政府は今回、議会に対し、相互交換をできるようにする法案の可決も求めた。
ただ、企業の実質的所有者の開示をめぐっては、議会ですでに同様の法案が出されているが、企業経営者に近い野党・共和党の反対で可決の見通しが立っていない。口座情報の相互交換も過去3回提案されているが実現しておらず、今回も困難が予想される。(ワシントン=五十嵐大介)